渇望男の潤いペット
「ライムがどうしても食べたい」

そう言われ果物屋まで出掛けた間だった…





『永遠に愛しています―』

そんな書き置きを遺して…

何がいけなかったんだ…

何があったんだ…

子供はどうするんだ…

どうして…


そんな事ばかり考える…


彼女にとって俺は何だったんだろう…

父親として認めてはくれなかったんだろうか…

夫としても…



しばらく仕事なんて出来ず、あの部屋にこもり続けた…


何も考えられない…


満月の事以外何も…








しかし二週間後、俺は正気にさせられる全国ニュースを見てしまう…


『宝田議院令嬢と思われる衣服が、M海岸で発見される』と


彼女は還ったんだ…あの海に…

彼女は行ってしまった

誰の手も届かない遠くへ…

見事に逃げ切ってしまった






俺は宝石の無い揃いの指輪を右手で握りしめ、独りで泣いた


彼女を知って、より孤独を知る…

もう誰も愛したくない…

いや、愛せない…

満月、愛してるよ…


どんなに時間が経ってもきっと忘れられない…
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