ちょこれーとぼーい(♂)









 ……そう言えばあの黒縁眼鏡くん。



 どっかで見たことがあるような

 気がするし、しないような気もする。


 でもちょっとだけ懐かしい感じ…。


 まぁ、同じ学校だし

 廊下ですれ違ったりしてるのだろう。






 「おっ。」


 口の中に入っているチョコレートが溶け出し

 良い香りをだして口の中に広がる。



 この瞬間が私の何よりの至福の瞬間。







 「………チョコレート。」



 志麻にぃの手当が終わったのか

 右頬に湿布が貼ってある

 黒縁眼鏡くんが私の前に立っていた。





 ……欲しいのかな。




 私は右ポケットからチョコレートを取り出して

 黒縁眼鏡くんの前にそっと差し出した。


 涼太も志麻にぃも

 私のことをじっとみていた。





 「……あげる。
  これ魔法のチョコレートだから
  すぐに痛み取れるよ。」



 志麻にぃの言葉をパクってみた。



 案外この言葉を言うのは恥ずかしい。


 黒縁眼鏡くんは何も言わずに

 チョコレートを受け取る。




 だけど、私は見逃さなかった。



 チョコレートを受け取ったほんの一瞬。







 無表情だった顔が悲しそうな表情に

 なっていた事を━━━…

 







< 21 / 274 >

この作品をシェア

pagetop