花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
俺はゆっくりと振り返り、侑美ちゃんと向き合った。

侑美ちゃんは、俯いていた顔を静かに上げる。
目が少し潤んで、赤い。
泣く手前だったのだろうか。


「俺。
侑美ちゃんが言うほど、いい男でもなんでもないよ」


それを否定する様に侑美ちゃんは首を横に振る。
俺からしたらそれにも笑ってしまう。


「何も、知らないだろ。俺の事。
俺、昔遊び人だったよ」

「え」


嘲笑しながら言う俺に、侑美ちゃんは目をパチパチとさせる。


「三股とか余裕だった。合コンもたくさんした。
だけど、麻美に出会って俺は一途になったんだ。
だから、誰がダメなんじゃなくて、麻美でないとダメなの。
麻美の代わりなんていないでしょ?」

「………」


俺の過去に驚いているのか、それとも、軽蔑しているのか。
侑美ちゃんは俺から視線を逸らすと、口許に手を当てた。

何を侑美ちゃんが考えているのかはわからない。
興味もない。


「そういう事だから。
もう、俺本当に帰るね」

侑美ちゃんはさっきと変わらない体勢のまま、俺を見る事さえしない。
それに息をついてから、俺は今度こそ帰ろうと踵を返す。

その後侑美ちゃんも、俺に声をかける事はなかった。
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