花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「そんなん知らねえ」なんて、きっと麻美は軽く笑い流すんだろう。
それがまた麻美らしくて、いいや。


自然と口角が上がっていたらしい俺。
その視線の先に誰かがいて、傘を上げて顔を確認する。
目の前にいたのは拓。

かなりドン引きした顔をしていた。


いつの間にか、駅前に着いていたらしい。


「哲ちゃん…ニヤつきながら歩くのまじで気持ち悪いよ」

「……ニヤついてた?」

「かなり」


そう言われて、傘を持っていない手で自分の顔を咄嗟に触る。
拓はまだ呆れた顔をしていた。


「何考えてたんだよ」

「……秘密」

「はあ?」

「秘密ったら、秘密!」

「…女かよ」

「あはは」


拓は俺の言い方にお手上げポーズ。
それもまた面白くて、俺は笑った。


「どこ行くんだよー」

「海」

「は?」

「嘘、どっか話せるとこ」

「はあ?」

「まあ、どこでもいいんだけどね」

「哲ちゃん、意味不明」

「どうして」

「どうしてって…」


ぽりぽりと頭を掻いてから、拓はう~んと唸る。
少し拓をからかってから、腹ごしらえすっかと、俺と拓は行きつけの定食屋へと向かう。

そこで食べてから、外に出たら雨は小降りになっていた。
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