花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「うん、麻美がいいってのはわかってんだけどさ。
俺も好きだった事あるし、わかる。
けど、哲ちゃん、ちょっと麻美に執着しすぎじゃね?」

「…そんな事ないけど」

「いや、あるって」

「ない」


雨がポツポツと、俺の頭に当たる。
同様、拓にも。


それでも、俺達が傘を差す事はなく向かい合ったまま。


拓は真剣な顔で俺を見ていた。



「いつまで意地はってんだよ」

「はってねえよ!」

「はってんだろ!麻美は、いねえんだ!もう!どこにも!」

「わかってる!」

「いいや、わかってねえ!!
麻美の幻影に悩まされて、いつまで経ったって夢うつつだ。
…哲ちゃん…こんなことになるなら…。
俺、麻美紹介しなきゃよかったな」

「そうだよな、それだったらもしかしたら麻美はお前んとこにいったかもな」


その俺の返事に、拓の顔がくしゃっと歪む。



「ちげえだろ!!!!
どうして、どうして、そんな卑屈になっちまったんだよ!
麻美が生きてた頃の哲ちゃんに戻ってくれよ!」

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