花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「…そう、言うとこだよ」
「…え?」
「麻美にマヒして、中毒患者みたいだよ。
哲ちゃん」
「………」
「麻美は、死んだんだ。もう、いない。
一生会えない。
なあ、麻美のことあの世で安心させろよ」
「……」
「哲ちゃんがこんなに引きずるだなんて、俺も思ってなかった。
だけど…これじゃあ、麻美が浮かばれねえだろうがよ…」
そう、言った拓の語尾は擦れて、震えていた。
顔を手で覆って、歯を食いしばっている。
…泣いてるのか…?
「拓…」
震える声で、拓は言った。
「…哲ちゃんだから。
哲ちゃんだから…俺、いいって言ったじゃん」
「……」
「他の誰でもない、哲ちゃんだから麻美と付き合ってもいいって思った。
哲ちゃんなら麻美のこと、幸せに出来るって思ったから」
「………」
「…現に麻美のこと、哲ちゃんは幸せにしたよ。
男を好きになれなかった麻美が、最期に好きな男と結ばれたんだから」
「……拓…」
「これ以上ねえだろうよ。
そんなら哲ちゃんもおんなじぐれえ、幸せにならねえと。
麻美が死んでから今まで付き合った女の、中身ちゃんと見てきたのかよ?」
答えに詰まる。
図星過ぎて、何も言えない。