花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「何だろうな。俺も理解できるからな。好きな人を忘れられないって気持ち。
拓斗は変な話、次に…菜々美ちゃんに行けただろ?
だから、哲の気持ちが理解出来ないんじゃないか?」

「……」

「俺は気の済むまで好きでいたらいいんじゃねえ?って思うわけよ。
でも、拓斗はきっと哲に幸せになって貰いたいんだよな」

「……」

「麻美ちゃんを好きでいても、幸せは訪れないだろ?
不幸だとも思わないけど…」

「……うん」


不幸だとも思わないって。
夏樹は本当に優しい。

俺が好きでいて、どんだけ苦しんでいるかわかっている癖に。


それが不幸だなんて言わないんだ。


「俺と哲の決定的な違いは…“いる”か、“いない”かだよな」

「………」


夏樹の好きなあかりちゃんは、夏樹と離れても…どこかで生きていた。
だからこそ、夏樹は好きでいられたんだ。

麻美は。

麻美は…もう、この世にはいないのに。
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