花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「あ、おはようございますー!」
開店して、30分程経った頃、キムの一際大きい声がした。
常連かな。
「店長ですよね!
でも、店長…今結構…結構…」
……キムの野郎。
俺は溜め息をついてから、少しだけ顔を出して
「木村」
そう言った。
「げ、店長聞いてたんすか!」
「丸聞こえだわ」
びくっとしてこっちを向くキムの後ろには、腹を抱えて笑っている堤さんの姿。
ああ、堤さんは今日もカッコいい。
だけど、今の流れを見られてたと思うと、何とも気恥かしい。
「おはようございます、堤さん」
「おはよう、哲君」
「こないだ言ってた、アクセあるじゃないですか。
あれ、来月入荷です」
「本当?」
「はい、でも数少ないんで…お取り置きしますか?」
「是非とも、よろしく」
「わかりました」
そう言いながら、キムにアイコンタクトする。
堤さんがレジまで来ると、取り置きの用紙を出して品名などを書いて行く。