花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「店長ー」
畳みを終えたキムがそんな俺を呼びとめる。
「ん?」
「店長って麻美さん好きだったんですか」
「は」
目をパチパチとさせてキムを見るが、普段は見せない様な真面目な顔で俺を見ていた。
「俺、麻美さん知ってますよ」
「え、そうなの?」
「元カノが花蓮だったんで」
「……初めて知った」
「わざわざ言いませんよ、そんな事」
「まあ、確かに」
「そういうわけで、麻美さんの事は知ってたんです。つか、会った事あります」
「え」
「その時に、元カノの事よろしくな~って笑いながら俺に話しかけて来たのを覚えてますよ。
まあ、それが最初で最後だったけど。
結局すぐに元カノとは別れちゃったんで」
「………」
「その後、麻美さんが死んだって事だけは風の便りで聞いてましたから」
「……そうか」
「だから、びっくりです。まさか店長が好きだったなんて」
「はは」
渇いた笑いを零す俺。
キム。
だった、じゃない。
今でも好きなんだ。
だけど、そこは訂正しないでおく。
信頼してないとかでなく、あんま話したくない事実だったから。