花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
誰もが切ない恋をしている
「…待ち伏せ好きだね」
俺は郁美ちゃんの前まで行くと、眉を下げてそう言う。
「……こないだはごめんなさい」
「まあ、ちょっと驚いたけど」
「私もです」
「だろうね」
「哲さんが、あんな怒るとか思わなくって」
「……ちょっと、話さない?」
「え?」
「立ち話もなんだし。どっか入ろうか」
「…はい」
俺達はいつも行く居酒屋に入ると、注文をする。
郁美ちゃんも最初は気が引けてたみたいだったが、他愛ない話をしたら少し緊張がほぐれたみたいだった。
「ねえ、郁美ちゃんの事聞かせてよ」
「え、私の事ですか?」
「うん。光の知り合いっていないし、俺聞きたい」
「…あんま綺麗な話じゃないですよ?」
「うん。わかってる」
窺うように俺を見ていたが、一息つくと諦めたかの様に郁美ちゃんは話し始めた。