花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「どこ行くー?」

「どこ行きたいー?」

「んー、わからん」

「あはは、ぶらぶらしましょーか」

「いいね、それ」


目的地を特に決めず、俺達は出発した。


「次、右?左?」

「んー左」

「おっけ」


こんな感じで分かれ道になると朱美ちゃんに聞いて、指示通りに曲がる。
それを何度か繰り返していると、工場地帯に辿りついてしまった。

いるのはトラックか、作業員か。
一般人はいない。


「あー、戻らないとだね」

「だねー」

「でも、一旦座ろうか」

「うん」


自動販売機でジュースを買うと、朱美ちゃんに差し出した。


「ありがと」

「どういたしまして」


自分の缶コーヒーのプルタブを開けて、それに口をつける。
その時、ふいに視線が朱美ちゃんの手にいった。



“まあ、それを止めたのが朱美ですよ”


「……朱美ちゃん、麻美のナイフを止めたって本当?」

「ぶっ!!!」


ジュースを吹き出しそうになる朱美ちゃんを俺は真剣な顔で見る。
ギリギリ、ジュースはこぼれていない。
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