花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「どこで聞いたの、それ」
しかめっ面した朱美ちゃんが口を尖らせながら俺に聞く。
「郁美ちゃん」
「…誰」
「元光のメンバー」
「……そう。それ、まじだよ」
ホレって言いながら、自分の右手を見せる。
うっすらだけど、手の平部分に横に傷があった。
「あん時は無我夢中だったからね。傷とか一切気にしてなかった」
「………」
その手を俺は覆う様に握り締める。
「……朱美ちゃん…女の子なのに」
「…哲、さん」
再度、その傷痕に視線を落とす。
くっと、俺の顔が歪む。
「これも、私の大事な証。
花蓮として、特攻隊長として、生きて来た証明。
だから、女とか関係ないんだって。哲さん」
「うん、うん…わかってる。わかってる」
朱美ちゃん、気持ちはわかってる。
だけど、やっぱり女の子が傷なんてって思っちゃうよ。
女の子はいつまでも、いつでも、守られる対象じゃんって思う。
そんな決めつけがうざったいのかもしれないけどさ。
「……っつーか、こっちのがひでーよ?」
そう言いながら、覆っている俺の手を広げて傷痕をなぞった。
俺の手に残る、傷痕。