花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「店長はいないんですか?」


「え?」


「彼女」


「ああ、俺はモテねーし」



俺がそう答えると、二人して目をばっちし開けて俺を射ぬくように見た。


それから顔を見合せてムンクの叫びみたいなポーズを二人して取る。





「はああ?!?!何言ってるんですか!
逆ナンされたりしてるじゃないですかーーー」


「そうだっけ?」


「店長の彼女の話、まじ聞かないですよね。
忘れられない女とかいるんですか?」


「……い、っねーから!ほらほら、仕事だ、仕事ー」


「今、客いねーっすもん」


「アホ、キムはマネキンあんだろ」


「忘れてた、やべ」



キムは思い出したのか、急いで洋服を着せに向かう。

まじでキムは憎めねえ。





そうしてると、お客さんがちらほら見えたから俺は他の店に行こうと二人に声をかけた。





「店長、行くんすか?」


「おー頑張れー。明日なー」


「お疲れ様です!」


「んー」




ひらひらと手を振ると、俺はぶらぶらと店内を歩いた。

ここで働いて長いから、他の店の店員ともよく話す。



歩く度におはようと声がかかる。





それが居心地がいい。
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