花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「だからね、花蓮は最高なんだよ、本当に。
言いたい事は言うだろ、あいつ等。だから、大好きなんだ」

「うん、そっちのが俺も好き」

「だよねえ。腹に何抱えてっかわかんない様な女は私は怖くて無理」

「朱美ちゃんでも怖いモノあるんだ」

「そりゃあるわ。
自然災害とか、最高に怖いな」

「…自然災害」

「だって、ちょっと雨たくさん降っただけで土砂崩れ起きて、死人出たりするんだぜ?
怖くね?」

「うん、確かに怖い」

「人間はねえ、裏で何してるかわかんない様な奴が一番怖いよ」


朱美ちゃんはそう言うと、ベンチの背にもたれて遠くを見つめた。


「だからこそ、真っ直ぐな哲さんとかが好きなんだよ」


空を仰ぎながら、朱美ちゃんは独り事の様に呟く。


「ああ、好きだった、な。だった。もう諦めたんだから」


てへってベロを出しながら、朱美ちゃんはおどける様に笑った。

そんな直ぐに切り替えなんて出来ないのを俺は知ってる。
一番よく知ってる。
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