花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「あー哲、お前休み!?」



そうやって声をかけてきたのは、俺の店の二個先にあるお店の店長だ。

名前は恋滋(れんじ)。
俺と同い年。




「おー休み」


手を上げながら俺はそのお店に足を踏み入れる。



あ、このベルトかっこいい。
って、さすがにもうベルトいらねえか。





「うわ、いいなー。
俺さ、今日娘の誕生日なんだよ。
だから休み取りたかったんだけど人いなくてさー」


「あ、紗結ちゃん、二歳だっけ?」


「そーそー!まじで可愛いんだよな」


「いいなあ…」



俺が羨むように見つめると、恋滋が切ない表情で見つめ返す。
そして、ぼろりと呟く。





「…まだ引きずってるのか…?」


「………」






恋滋は麻美のことも、麻美が死んだことも知ってる。
会ったことはないけれど、麻美の存在はそれほど大きかった。



この地元に住んでる奴で、俺達と同い年ぐらいなら大体知ってる。




例え、不良と関わりがなくても。




麻美は、本当に皆の憧れの的だった。



恋滋の問いに、俺は情けなく眉を下げた。
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