花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
その願いも虚しく、俺が外に出た時には既に二人は対峙していた。
「朱美じゃん」
「誰?」
「元光」
「光?」
そう、話してる所へ走り寄って会話を遮る。
「朱美ちゃん!郁美ちゃん!」
二人は同時に俺を見た。
だけど、すぐにまた視線を元に戻す。
「…哲さんが言ってたの、この女?」
「そう、郁美ちゃん」
「ふ~ん」
それから、朱美ちゃんは郁美ちゃんを睨みつける。
鋭くなった朱美ちゃんと、同じ様に郁美ちゃんも顔付を変えた。
普段、感じる事ないピリピリとした空気。
「……はい、止め止め」
その空気を切り裂く様に、俺は二人の間へと入った。
「今日は、俺朱美ちゃんと用事あるの。
郁美ちゃん、来るなら前もって言ってくれた方が助かる。
予定が空いてるなら、付き合うから」
「…嘘です、哲さんは付き合ってなんかくれませんよ」
「なんでさ。普通に遊ぶぐらい行くって」
「本当ですか」
「本当、本当」
「…もう、いいかな?哲さんと出かけても」
痺れを切らした朱美ちゃんが、口を開く。
だけど、その返答に俺と朱美ちゃんは目を見開いた。