花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「ごめん。
俺。
誰かが麻美の事とか、俺の気持ちで言い争うとことか見たくない」
「………」
「………」
ぎゅうっと強く拳を作った俺は、悲しさや、歯痒さから奥歯を噛みしめる。
そこに、郁美ちゃんが口を開く。
「ずっと気になってたんだけど…聞いてもいいですか」
「何?」
郁美ちゃんは腕を組むと、俺を真っ直ぐに見つめた。
「哲さんは麻美が好きなんですよね?」
「うん」
「麻美が生きてた時からずっと?」
「うん」
「じゃあ、尚更わかんないです」
「どういう事?」
「おかしくないですか?」
「何が?」
中々、核心を話そうとしない郁美ちゃんにイラつき出す俺。
語尾が少しずつ強くなる。
「哲さんと会ってから、ずっと思ってた事言いますよ?」
それに俺は答えず、郁美ちゃんの言葉を待った。