花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「あ」
だけど、そう声は聞こえて郁美ちゃんの足がぴたりと止まる。
「…麻美、今喜んでるよ、きっと」
振り返りもせずに、そう呟いてから本当にその場から去って行った。
一瞬、意味がわからなくて。
二人してきょとんとして顔を見合わせた。
それからぷっと二人して吹き出した。
心の底から笑ったの、久しぶりかもしれない。
「確かに麻美、間違いなく喜んでるよ。
麻美はそういう奴だ」
「…そうだね…」
俺は、麻美の何を見てたんだろう。
俺は、朱美の何を見てたんだろう。
麻美は誰よりも、他人を思いやれる人だったじゃないか。
自分を犠牲にしてでも誰かを助けるような子だったじゃないか。
それをわからせてくれた朱美ちゃんをふっと見つめる。