花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「ありがとな、こんな時間までごめん」

「いいのいいの、また来いよ」

「ああ、来るよ」

「あ、菜々美、俺ちょっと出てくるわ」

「え?いらねえよ?」

「いーからいーから、すぐ戻るな」


菜々美ちゃんははーい、と返事をして手を振る。


…なんだよ、拓。
別にいらねえのに。


そう、思いながらすっかり暗くなった路地を三人で歩く。


「やーもう、すっかり寒くなってきたな」

「なー、寒いったらねえや」

「本当に」

拓の言葉に朱美ちゃんと俺が賛同する。


それから、拓はぴたっと立ち止まると俺と朱美ちゃんを交互に見た。


「……哲ちゃん」

「ん」

「…朱美」

「何」


独り事の様に俺達の名前を呼ぶ拓。
俯きかけた顔を上げると、俺達を再度見る。
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