花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「朱美。哲ちゃん、バカだから麻美の事をたまに思い出すかもしれない。
だけど、許してやって。
一途で、本当に想ってるって事だけは保証するから」

「……わかった」


俺はゴクリと生唾を飲み込む。
拓は本当に真剣な顔で朱美ちゃんに言っていたから。
それがわかったのか、朱美ちゃんも真面目な顔で頷く。



「哲ちゃん」

「……」

やめろよ。
もう、涙腺緩んできた。


「麻美より、朱美の方が実はいい女だって事やっと気付いたか。
おせえんだよ。いつも。
きっと朱美はどんな哲ちゃんでも受け入れる。
だけど、それに甘えてばっかでいんなよ?」

「………」

コクンと頷く事だけが精一杯で、声が出ない。


「朱美を幸せにしなかったら、今度こそ俺は許さない。
今度こそ、絶交だ!」

「……く、はは、絶交って、あは、はは……うん、やく、そくする」

「よろしい」

「……生意気」


涙が溢れ出そうになるのを、俺は堪えながら拓に悪態つく。
だけど、拓は爽やかに笑っていた。

なんだよ、パンチ野郎。
畜生、拓がカッコよくて仕方ねえ。
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