花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「好きだ」
翌日、目覚めた俺は仕事の準備を始めた。
きちんとした彼女が出来たのは数年振り。
どこか、そわそわしている。
髪の毛を弄る手も、無駄に気合いが入ってしまう。
準備を終えた俺は携帯を確認してから、家を後にした。
職場についてから、早番の雅紀に声をかけると作業に入る。
平日という事もあって、やっぱり人通りは少ない。
雅紀が裏の作業をしてる間、俺は店内を見ていた。
あ。後で恋滋に報告するか。
と、思ったら先に恋滋が俺の店へとやって来た。
恋滋は暇な時、こうやって自分の職場を少し放棄する。
まあ、放棄と言っても数分だけど。
うちは人が足りないから、目を離すと本当に誰もいなくなっちゃうしなあ。
「哲ー、はよー」
「あ、恋滋。ナイスタイミング」
「何。何が」
近付いてくる恋滋は興味津々に声を弾ませた。