花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「まあ、でも、嫌だよな。彼女がスナックで手伝いとは言え、働いてるって」
「あ、いや、違うよ」
「え?」
目を真ん丸にして、こっちを見る朱美ちゃん。
一瞬の沈黙の後、俺ははっきりと否定した。
「朱美ちゃんのスナックについてじゃないよ」
「あれ、違うの?」
それに俺は頷く。
まあ、確かに嫌だけどね。
やめてくれるなら万々歳だけど。
「んと、ね。
それは確かに嫌ではあるけど…朱美ちゃんを信用してるから。
だから、大丈夫。
話、ってのはね。
俺の気持ち聞いてもらっていい?」
「…哲の、気持ち?」
「そう、俺の気持ち」
少しだけ顔を強張らせる朱美ちゃん。
その朱美ちゃんの手を取る。
それから、ゆっくりと俺の手で包み込んだ。