花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
俺が聞き返すと、その子はわたわたしながら続けた。


「さっき、連絡先、聞いてなかったんで…。
聞いても、いいですか!?」



…わざと、置いて出たんだけどな。

まあ、冷たく突き放してないからわかってないのかもしれないけど。

はっきりと、言うのは相手を傷付けてしまうから。



それが、麻美がいなくなってから学習したこと。


「…いいよ?」


俺は携帯を取り出して、赤外線で連絡先を教える。


「じゃあ、メールでも電話でも頂戴。
これから待ち合わせあるから、ごめんね」



敢えて、彼女の連絡先を聞かずに俺は手を振ってその場を後にした。


これから彼女が、俺の触れて欲しくなかった部分に触れてきて。
俺を動揺させることなんて。



まだ知らなかったんだ。




携帯を閉じて、俺は本屋へと向かった。

さっきの彼女のことなんて、もう忘れて。

きっと、メールが来ても返信なんてしないかもしれない。
例えしても、会うことはないと思う。




俺の中での最期の女は。

やっぱり麻美だと思うから。
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