花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「喧嘩別れだったからさ、二人」


「ああ、あり得る」


「どっちも気強いしな」


「佐緒里ちゃん気合い入ってるしね」


麻美の家に通ってた時に、三人が訪れた時のことを思い出してくすくすと笑う。


「なあ、もう連絡取れないん?」


「え?」


「麻美の母親と」


「…ああ、うん」



あれから俺は毎日の様に通ってたわけだけど、それも数カ月ほどで。



麻美の母親は忽然と姿をくらましたんだ。


多分、この地に未練なんかなかったんだと思う。
けど、麻美が育った地なのに。


携帯番号なんか、もちろん聞いてなかったし。
俺は手がかりなしで。


どうしようもなかったんだ。

きっと、仏壇なんか放っといてるかもしれない。
むしろ、捨ててるかもしれない。


もし、新しい人生を送るのだとしたらそれはお荷物でしかないから。





…母親だって…麻美をぞんざいに扱うのは嫌だ。
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