花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「はあ、哲ちゃんは馬鹿だな」


呆れたように言ってから拓は俺の事を目を細めてしらっと見る。


「哲ちゃんの真っ直ぐ過ぎる想いに麻美は、心動かされたんじゃんか」

「そんなの拓だって!」

「ちっげーの、麻美は哲ちゃんじゃなきゃダメだったの!」

「………拓だって…真っ直ぐじゃんか」

有無を言わせない言い方に、俺は口を尖らせて尻すぼみになりながら言った。
そんな俺を、拓はふっと息を吐き出しながら笑った。


「あーこれは哲さんの負けだね」

「負けって…」

「だって、前に佐緒里が言ってたじゃん。
哲さんは麻美に愛されてたんだって」

「…言われたけども」

だけど、その確信を持てないと言うか。
なんつうか。

麻美が彼女になったのは、たった一日だったから。

だから、イマイチ実感ってものが沸かない。
まあ、多分これは俺にしかわからない感情なのかもしれないな。


生返事をしながら、俺は少しぬるくなったウーロン茶を流し込む。
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