花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「哲さん、別に麻美を好きでいいと思うよ」

朱美ちゃんは俺を見つめると、優しく微笑む。
正面を見ると、見慣れたショッピングビル。

俺と朱美ちゃんはいつの間にか駅前まで来ていた。


「麻美に惚れる理由はわかるから」

立ち止まると、朱美ちゃんは言う。


「だって、あんなバカな奴いねーよ」

「……バカって」

「バカだよ、バカ」

呟くように言う俺に朱美ちゃんはにかっと笑うと再度、麻美をバカと言った。


「だって、花蓮の皆置いてっただろー。
私に佐緒里に琴子に、菜々美に…他にも。
それにこんなにも想ってくれる哲さんも置いてっただろー。
ただのバカじゃねえか」

「………ほ、んと」

「哲さんも言っちゃいなよ。バカって。
俺を置いてくなんてアホーって。
処女俺に捧げてから逝けよって」

「あ、朱美ちゃん!」

目をぱちくりさせる俺を見て、朱美ちゃんはげらげらと腹を抱えて笑っている。
笑い事じゃねえし!
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