花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「寂しいですか?」

「まあねえ…、でも、それはお互い様でしょ」

「はあ、すげえ。堤さん」

「そう?」

「俺には遠距離なんて出来なさそうです」

「はは、彼女が不安なんじゃない?
哲君一人にしたら」

「いや、俺のが不安です」

「えー、哲君、嫉妬とかしないでさっぱりしてそうなのに」


そう、見えるのだろうか?
俺、麻美が男と一緒にいるだけで嫉妬するけど。

え、拓とか、信司とかならいいけど。
無理無理。

夏樹とか、まじで無理。
いや、夏樹が手を出すとかは考えてないけども。
麻美が惚れそう。

無理無理。

仲良くなって欲しい気持ちもあるけど、麻美だけは誰にも渡したくないし。


「うん、無理です」

俺が腕を組みながら、眉を顰めて言うと堤さんはカラっと笑った。


「何、そんな子がいるの?」

「えっ?」

「好きな子、って事」

「え、あ、う」

「動揺しすぎだよ、哲君」

「………」


思いっきり、目を泳がせてしまった俺を見て堤さんは更に声を上げて笑った。
苦笑いする俺。
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