花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
侑美の正体
「店長、あの子っす」
彼女と俺を交互に見ながら、キムはひそひそと言う。
…まあ、確かに。
顔は可愛いと思うよ。本当。
「俺、先に帰りますね」
キムは気を利かせようとしたのか、そう告げると自分の自転車まで走って行く。
侑美は俺に気付くと、笑顔を向けた。
「哲さんっ」
「………久しぶり」
ぎこちなく笑う俺。
「お仕事の帰りですか?
お疲れ様です。食事でもどうかなって思って」
「……でも、今日はもう帰りたいから」
「そうですか…。
どうしても無理ですか…?」
「……」
俺を上目遣いで見つめる侑美。
「今日…出かけてくれたらこれから無理言いません」
「…わかった。行こうか。
それにこんな時間に女の子一人は危ないから送る」
「はいっ、ありがとうございますっ」
侑美は俺の返事に嬉しそうに目を細める。
はあ、やっぱり凄く積極的。
羨ましくなるぐらい。
でなきゃ、いきなり話しかけたりなんか出来ないよな。