花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「ははは、いいっすよ、店長。俺、雅紀と家近いっすから」


キムは笑いながら俺に抱き着く雅紀を自分の方へと寄せる。
「寝てやがる、こいつ」だなんて、雅紀に悪態つきながら。


「じゃあ、また明日。俺、タクシーで帰ります」

「悪いな、なんか任せて」

「いいっすよ。全然」

「それじゃ、また明日」

「お疲れっす」


タクシーに乗り込む二人を見送ってから、俺は原付に乗って信司の元へと向かった。
すぐに行き慣れた信司のマンションが見えてくる。


信司の一人暮らしの部屋は駅から近かった。
六階建てでレンガ造りのマンション。

信司の部屋は二階。
俺は駐輪場に原付を止めると、階段で二階へと上がった。

エレベーターはあるんだけど、階段からの方が近い。
それに二階ならわざわざ使う必要もない。


信司の部屋に到着すると、勝手に玄関の扉を開ける。
リビングから電気の明りと、テレビの音が漏れていた。



「おじゃまー」


そう言いながら靴を脱ぐ俺。
リビングまで進むと、信司が布団に寝転んでいた。


持っていた雑誌から俺に目線を寄越すと、「よ」と言って手を上げる。
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