花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
信司の腕を掴むと、

「羨ましいんだよ」

俺は表情を変える事なくそう零した。


「…は」

眉根を更に寄せて、信司は訝しげな顔で俺を見る。


「会える信司と会える佐緒里ちゃんが」

「………」

「俺は麻美と二度と会えないのに。
会える二人が、どうして素直にならねえんだよ。
意地張って別れる方がカッコ悪いだろうがよ!」

「っ……」



信司の腕を掴む手に力が入る。
そんな俺とは反対に、信司の胸倉を掴んでいた手が緩んだ。


苦しそうな顔を見せた信司に、俺の胸も痛む。
だって、信司だって…。
麻美がいなくなって辛くなかったわけじゃないんだ。



「俺がどう足掻いたって、手に入らないのに。
少し本音を伝えれば…手に入るんだよ。
お願いだから。信司は後悔するな」



信司も佐緒里ちゃんが好きで。
きっと、佐緒里ちゃんも…信司が好きなんだよ。
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