花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
「……海?」


朱美ちゃんは降りてメットを外すと、水平線を眺めながら呟く。


「そう、海」

「何で」

「麻美と来てたから」

「………」


メットをバイクのシートの上に置くと、朱美ちゃんは海へと一歩一歩近づいた。
その後ろ姿を俺は見つめる。

月明りに照らされる朱美ちゃん。
くるっと振り返るが、暗くて表情がよく見えない。

だけど、口許が孤を描いている様に見えた。


「やっべーな。入りたい」

「………え?」

「哲さん!入ってしまおう!」

「って…朱美ちゃん、本気!?まだ夏になってないよ!」

「いいんじゃねーーー」

「風邪引くよ!」

「それもいいんじゃねーーーー」

「えええええ」


あははっと笑った後、朱美ちゃんは腕を思いっきり空へと伸ばして

「全部、流しちゃおうぜーーー」

そう言った。



それに言葉が詰まる。
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