花蓮~麻美が遺した世界~【完結】


「………」

「哲さん」


今度は俺に一歩一歩、朱美ちゃんは近付いて来る。
やっと、表情が見えるぐらいに近付いた時。


朱美ちゃんは真面目な顔をしていた。


「……私なら話聞いてくれるから、気持ちを軽くしたかったんだろ?」

「ちがっ…」

「いや、いいんだよ。それでも。
……あの日。
麻美な、ここで倒れてたんだって」

「え」


目を丸くする俺に、朱美ちゃんはフッと笑う。


「あの後、病院の医師に聞いたんだ。
麻美は朝方、ここで倒れてて病院に運ばれた。
それが最初。
そして、病気って事を知って哲さんに別れを告げた」

「………」


息をする事がうまく出来ない。


「麻美ね、あの日。
ここに連れて来てって私にお願いしたんだ。
連れて来たら、麻美のバイクがあって。
麻美、嬉しそうに愛でてた」


……ああ。
胸が苦しい。
苦しい。
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