花蓮~麻美が遺した世界~【完結】
その後…情けない俺を、朱美ちゃんは文句一つ言わず慰めてくれた。
涙を流す俺に、憎まれ口は叩いたモノの、それは俺に気を遣わせない為の言葉で。


そんな事がわかってしまうから、更に胸が苦しくなった。



「哲さん、カラオケでも行く?」

「カラオケ?」

「そー。叫ばない?」

「叫ぶの?」

「いや、ここで叫んでもいいんだけどね。
さすがにうるさそー」

「あはは、確かに」

「ね、哲さんオゴリで!」

「もちろんだよ、こんなに迷惑かけて朱美ちゃんに出させないって」


苦笑する俺に、朱美ちゃんは目を細めて笑う。
本当に優しく笑う、朱美ちゃんの素敵な笑顔にどうして今まで気付かなかったのだろうか。


「朱美ちゃんって…きれー…」

「は!?」


思わずぽつりと独白する俺に、眉を顰める朱美ちゃん。
それに俺は慌てながら、手を振る。


「ちがっ、いや、違くはない!綺麗だなって思ったから、ってあれ。
俺、何言ってんだかわかんない」

「何それ、あっははーー、哲さん、私を口説いてるの?」

「いやっ」

「否定するのも失礼だ」

「……確かに、ごめんなさい」


しゅんとなる俺に、今度は朱美ちゃんが吹き出した。
それに目を白黒させる。
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