32 Days

馨はお墓を見渡しながらそう言った


「私達は彼等の事を覚えられない。どれだけ忘れたくなくても…死んだ者の記憶は残らない。

だからせめて…ここに生きていたという証を、残したいのではないでしょうか?」


たとえ記憶から抹消されても


確かに彼等は、ここで生きていた


『彼』も、そうだったのだろうか…



「…確かに、馨さんの言う通りかもしれないですね。」


「雲母は、死ぬのが怖い?」


由夜の問に、雲母は「はい、とても。」と微笑んだ


「大切な人達の中から自分が消えてしまうのが…とても怖いです。」


彼女の言葉は、どこか心に響いた


だけど、俺達はもう立ち止まれないから


この事も覚悟の上で…俺達は、この道を選んだのだから…



「…随分長くなりましたね。それでは、次に向かいましょうか?」


またいつも通りの笑顔に戻って


雲母は出口に向かって歩き出す


俺達は少し墓地の方をまだ見つめていた


「…分かってますよね?」

馨の問に、俺達は頷いた


「死への恐怖なんて…もうあるはずがない。」


こんな事覚悟の上



それでも尚…俺達は戦う事を選んだのだから…



その覚悟を再確認しながら


俺達は墓地を後にした






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