和田菜月物語
「麻奈に何かしちゃったのかな?」

私は西山に聴いた。
西山は私の顔を見た。
その時の表情は何だか悲しそうだった。

「…西山?」

「えっ?あ…。悪い…」

「考え事?」

私がそう聞くと西山は冷たく笑った。
そしてこう言った。

「さっき高島と話してたから…」

「えっ!?」

「また変な事言われたんだろう?」

「…麻奈」

「麻子なら大丈夫だと思うけど、麻奈は純粋だから」

「心配なの?」

「そりゃな…」

「ごめん…」

「何で和田が謝るんだよ?」

「私は麻奈の気持ちも知ってるし、西山も…」

「俺は未来一筋だ」

そう言った時の西山の表情は悲しそうだった。
辛いとか悔しいとかそんなんじゃない。
ただ悲しそうだった…。

「俺は麻奈の所に行く。和田は大川の所に言ってくれ行ってくれ」

「わ、わかった…」

そう言って西山は麻奈を追った。

私は大きくため息をついた。
その時足元に紙が飛んできた。

一緒に小さな鍵も入っていた。
そしてこう書かれてあった。

『この鍵はこのホテルのある所の部屋のカギだ。そこに大川亮磨が居る」

ハッと前を見た私。
だが前には誰も居なかった…。
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