和田菜月物語
放課後

入学式やらなんやらでみんなは騒いでいたがウチにはそんな気持ちがわからなかった。

「飛鳥!一緒に帰ろうぜ」

雅木もこう言う事に興味がない。
だからいつも二人で先に帰っていた。

家は隣同士で窓と窓で話せるくらいの近さ。

「いいよ」

帰り道ウチと雅木はいつも寄り道をして帰る。
これが毎日の日課だった。

でも今日は珍しくまっすぐ帰った。

不思議に思った。
ただただ不安で仕方がなかった。

「なぁ、雅木…」

そう言うと雅木は振り返って「ん?」と言う顔をしている。

「何かあったん?」

「いきなり何だよ…」

びっくりしたような落ち着いているような…。
雅木はそんな顔をしていた。

「だって珍しく今日は寄り道もしてないし、何も話さないし…」

すると雅木は冷たい表情で

「いつまでも子供のままで居れるかよ」

そう言うとすたすたと歩いて行ってしまった。

何よりもショックの気持ちが大きかった。

ウチは早く行く雅木の後ろをトボトボとついて行った。

そんなウチらを誰かが見ているように感じた。

この日からウチと雅木の人生が狂い始める一歩だったかもしれない。
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