王子様たちのひまつぶしっ!?
ナチュラルに傷口をえぐるタイプか。


ひどいな。


「葵、気をつけなよ」


凪君たちとは反対側の右側から、ボソッと小さく呟くような声が聞こえてきた。

私にしか聞こえないぐらいの声だったし、耳元凪君たちにも城ヶ崎さんにも聞こえてないとおもう。


そこにいたのは確かに海斗で。


「えー…?」


「よーい」


そんな事を話していると、あっという間に先生がピストルを真上の空に向かって向ける。


何が“気をつけて”なのか気になったが、私は先生の合図に集中する。


はりつめた緊張感が漂い、みんなが今か今かと真剣な表情になる。


「スタート!!」


「ドンッ」じゃないんだ…。と心のなかでツッコミつつ、私は城ヶ崎さんを置いていかないようにペースを落としながらスタートした。


だがしかーーーし。


遅い!遅すぎるよ!城ヶ崎さんっっ!


開始して数秒。


皆はもう先々走り抜けていく。


一方私と城ヶ崎さんは、行き遅れ、おいていかれてる。


私たちの前の人とはもう、50メートルぐらい差が開いている。


え?このマラソン参加者って男女あわせて120人ぐらいいたよね?


あっという間に最下位っ!?

「じょ、城ヶ崎さんっ!?」

私ははふはふと懸命に呼吸をしている城ヶ崎さんに顔だけを向けた。


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