パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~


「梓さん?」


駐車場に入った所で一台の車とすれ違った。
それに気付いたのは石田。
同時に奈桜の携帯が鳴る。


「……はい」


「奈桜?今、すれ違ったでしょ?」


「梓?あぁ、そうなの?仕事?えっ、今から?」


奈桜の眠気はいっぺんに吹き飛んだ。
時計の針は夜中の一時を過ぎている。
芸能人とはいえ、自分の子ではないとはいえ、一応、妻で、母だ。


「ごめんね。すぐ帰るから。桜ちゃんは寝てるから。宿題もちゃんとやったし、明日の用意も出来てる」


「どこに行くの?なんで今?オレ、帰って来たよ」


奈桜の声は少し怒っている。
明らかに不機嫌。
普段は他人にそんな態度は見せないが、梓には見せる。
甘えている証拠。
石田は子供みたいな奈桜の態度に必死で笑いをこらえた。
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