パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~


「奈桜さん、奈桜さん、」


『う……』と奈桜は小さな声を上げた。
ぼんやりとした頭がじわっと目覚めて行く。
うっすらと開けた目に映ったのは見覚えのある黒いパンツスーツ、後ろにひとつに束ねた黒い髪、黒ぶちメガネ。


「石田……さん?」


「痛みはどうですか?大丈夫ですか?」


『あぁ……』と呟いて体を動かそうとした。


「いてぇ」


「大丈夫ですか!?」


石田は慌てて奈桜の体を支える。


「ごめん。大丈夫。急に起きたから。いてて……。アハハ。まだちょっと痛いや」


顔をくしゃっとさせて笑う。
男のくせにカワイイ。
ほんとにこの人は……。
思わずつられて笑ってしまう。


「ほんとに病院に行かなくて大丈夫ですか?今からでも行きましょうか?」


「大丈夫だって。ほんとに。ありがとう」


何とか起こした体はまだ痛々しく見える。
< 102 / 222 >

この作品をシェア

pagetop