パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「奈桜さん、奈桜さん、」
『う……』と奈桜は小さな声を上げた。
ぼんやりとした頭がじわっと目覚めて行く。
うっすらと開けた目に映ったのは見覚えのある黒いパンツスーツ、後ろにひとつに束ねた黒い髪、黒ぶちメガネ。
「石田……さん?」
「痛みはどうですか?大丈夫ですか?」
『あぁ……』と呟いて体を動かそうとした。
「いてぇ」
「大丈夫ですか!?」
石田は慌てて奈桜の体を支える。
「ごめん。大丈夫。急に起きたから。いてて……。アハハ。まだちょっと痛いや」
顔をくしゃっとさせて笑う。
男のくせにカワイイ。
ほんとにこの人は……。
思わずつられて笑ってしまう。
「ほんとに病院に行かなくて大丈夫ですか?今からでも行きましょうか?」
「大丈夫だって。ほんとに。ありがとう」
何とか起こした体はまだ痛々しく見える。