パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
~本気だから~
静かな稽古場に小気味良く響く靴音。
時折、荒い息遣いが聞こえる。
曲はかかっていない。
一人きり。
すでに三時間が経ち、その額や首筋からは汗が滲み出している。
「奈桜!」
続けようとした言葉を泉が自分の口に人差し指を当てて制した。
奏は『何で!?』という顔で泉を見たが、仕方なく気持ちを抑えるように大きくため息をついた。
「マズイだろ?体、痛いはずだろ?何で踊ってんの?」
奏の声には怒りに似たものが混じっている。
止めない泉に対して怒っているのだろう。
二人は入り口に並んで一心不乱に踊る奈桜を見つめる。
それでも奈桜は気付かない。
今日は昼からZのメンバー全員でコンサートの振り付けがある。
披露するアルバム曲のうち、自身のソロ曲以外で三曲を奈桜が振り付ける事になっていた。
二曲はすでに仕上がり、残る一曲を朝から振り付けている。
元々ハードスケジュールでの仕事。
残る一曲は昨日しか時間がなかったのだ。