パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「すぐ帰るから。あのね、アメリカでお世話になった方が日本に来てるの。今、事務所の社長と会ってるんだけど。挨拶だけだから。ね?」


「分かってるよ。仕事だもんな。いいよ。うん。何も問題ナイ。じゃ、頑張って」


奈桜は自分を納得させると、さっさと電話を切ってしまった。
大人げない。子供っぽい。何でもいい。
要は、自分が帰って来たのに梓が出掛けた事に……やっぱり腹が立っている。


「大丈夫ですよ。運転されてたのは梓さんのマネージャーの方です」


「だからぁ!心配してないって。怒ってない」


そっぽを向く奈桜に、石田は笑いが込み上げる。
国民的アイドルの素顔は意外とカワイイ男の子だ。
触れられそうで決して触れられない、そんな近くて遠い人のこんな顔を見られるだけで気持ちは報われる。
石田の心は奈桜に鷲掴みされている。
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