パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
明るい光りが射し込むリビング。
南側一面は全面ガラス張り。
窓へと向いた白いソファーには人の気配は全くしない。
出来ればそこに疲れて眠っている梓を見つけたかった。
このマンションは梓との同居の際に新しく購入したもの。
前のマンションが高く売れたのが幸いで、少し広い所に移れた。
『ヤドカリだな』と奈桜は思った。
少しずつ、自分のその時の大きさに合わせて身の置き場を変えて行く。
これからもそうして行ければ幸せだろう。
でも、当分ここでいい。
広さは十分過ぎる程ある。


「梓……」


自分以外にこの家に人の気配がない。
娘の桜は学校に行っている。
疲れている奈桜を気遣って、寝ていると静かに行ってしまう。
いないのは分かっているが、とりあえずトイレや風呂場を探してみる。


「帰って来てないのか……」

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