パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
さとみの泣き声だけが虚しく響く。
もうどうする事も出来ないだろう。
これ以上動けば、さとみ一人の問題では済まされない。


「神川さん、……神川さんは平気なんですか?」


絞り出した言葉は神川へ向けられる。
神川は『ん?』と表情を変える。


「水無瀬……梓」


一瞬、神川の顔が強ばったのをさとみは見逃さなかった。


「何の事かな?」


笑いながら立ち上がる。


「好きですよね?私には分かります。奈桜さんから奪おうと思わないんですか?何とかしたいって思いませんか?」


神川は微笑んだまま、さとみを見つめる。


「何を証拠に言ってるのか分からないな。梓は確かにいい女だが、それだけだ。女優として以外、見た事はない」


「手の届く所にいるのに。掴みたくないんですか?……それはすごく辛い事じゃないですか?」
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