パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「仕事は?何時から?」


今度はキッチンに入ってコーヒーの準備をしている。
テキパキと動く梓と対照的に奈桜はだらだらと洗面所に向かう。


「今日は……何時だったっけ?ゆっくり。……だったと思う……」


あとは何を言ったか聞き取れなかった。
『何、それ』と軽く笑って、梓はトースターに食パンを押し込む。
いつもと変わらない幸せな日常。
だけど。
梓はぼんやりとパンを見つめていた。



「大丈夫?まだ気分悪いんだろ?あとは自分でやるから。寝てろよ」


「大丈夫だって。病気じゃないんだから。でも、せっかく奈桜がそう言ってくれてるんだし。そうしようかな?」


元々、色の白い梓だが、顔色が悪いせいで透き通るような肌色になっている。
気分が悪くてマネージャーの所に泊まったのは、どうやら本当のようだ。
少しでも疑った自分の器が小さくて、奈桜は一人で恥ずかしくなった。
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