パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
第2章 真白のため息
~欲しいものは取る~
「奈桜、電話鳴ってる」
広い稽古場。
来月発売になる新曲の振り付けの為に、Zのメンバーの川瀬 泉、森川 奏、三咲 心、海東 碧、そして奈桜が集まっていた。
休憩時間も一人、隅で黙々と踊っていた奈桜に奏が声をかける。
「あっ、ありがとう」
キュッと音を立てて止まり軽く走ると、無造作に置いてある、タオルの上のスマホを掴んだ。
「梓?どうした?大丈夫?」
梓に違いない。
きっとどうしようもなく辛くなったのだろう。
喋りながら、この後の仕事を考える。
今日は一日、レッスンだ。
奈桜は覚えるのが早く、振りはもう完璧に仕上がっている。
『何とかならないか……』
メンバーの反応やマネージャーへの言い訳が咄嗟に頭をよぎる。