パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~

最期の時を楽しむかのように、桜の花びらが風に乗って空を流れて行く。
その様を眺めながら、さとみも時を静かに眺めていた。


『舞台頑張ってね』と、優しい笑顔を残して奈桜は帰って行った。


「舞台……か」


それはさとみの思いつきの嘘だった。
偶然にもこの世で一番会いたい人にまた会えた。
色んな気持ちが入り混じる中、とっさについた嘘。
もう二度と会えないかもしれないと思った瞬間、気持ちを口走っていた。
役の台詞として。


でも、奈桜は分かっていた。
全部、分かって聞いてくれた。


そして、ちゃんと振ってくれた。


舞台という嘘も付き合ってくれた。



「やっぱり………、最高の人だな。遠くで見てた時と、一緒。カッコイイ。雨宮奈桜は世界で一番カッコイイ」


さとみの顔が笑顔になった。
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