パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~

「奈桜さん、急いで下さい!」


石田がドアを開けて待っている。


「あ、ありがとう!」


車に入り込む時間すらもどかしいように焦る奈桜は乗り込んだ瞬間、体のバランスを崩してシートに倒れ込んだ。


「大丈夫ですか?落ち着いて下さい。間に合いますから」


おでこをぶつけて手で押さえている奈桜をバックミラーで確認しながら言う。
こんな奈桜は初めて見た。
こんなに焦るなんて。
こんなに愛されてるなんて。
ほんの少し、嫉妬する。
間違ってるのは分かっている。


「必ず間に合わせますから。マネージャー生命に賭けて、必ず、奈桜さんを梓さんに会わせます」


力強く言う石田に奈桜は『ありがとう』と安心したように言う。


「私は……奈桜さんの……仕事のベストパートナーですから」


奈桜を乗せた車が動き出す。

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