パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
第11章 999本のバラ~何度生まれ変わってもあなたを愛する
~全部愛してる~
人の波をかきわけて奈桜は走る。
あまりの速さに、まだ誰もその人物が『雨宮奈桜』だと気付かない。
「どこだ!どこにいる?」
止まらない足と心は比例する。
こんなに気持ちが焦っているのは初めてだ。
ここで、今、梓に会わなければ、もう二度と元の関係に戻れないような気がする。
仲直りしようと思っても、会えない。
互いの思いがすれ違ったまま離れれば、その距離はどんどん離れて行くだろう。
「オレが悪い」
自分の器の小ささが梓を追い詰めたに違いない。
お腹に赤ちゃんがいてどれだけ不安だっただろう。
大きな仕事を抱えて一番支えて欲しい時に支えてもらえなかった梓の気持ち。
考えるほど辛い。
「梓……」
今すぐ抱きしめてその存在を確かめたい。
この手で。