パパはアイドル♪vol.3～奈桜ｸﾝの呟き～

「梓！！！」


奈桜の大きな声が空港の喧騒を破る。
瞬間、静まった空間の先に、柔らかいピンク色のワンピースを見つけた。
まるで咲いたばかりのバラのようにイキイキとした華やかさ。
隠そうとしても隠しきれないそのオーラ。
奈桜の視線の先にいるのは会いたかった、梓。


「奈桜？」


大きな声に驚いて顔を上げた梓は、そこに奈桜がいた事にまた驚く。
立ち上がろうとした梓に、奈桜が両手で制する。


「立たないで！いいから。オレがそっち行くから」


梓の体を気遣っての言葉だった。
梓はゆっくり座るとクスッと笑った。


「オーバーなんだから」


笑ったものの、奈桜の優しさが嬉しかった。
自分だけじゃなく、お腹の子供の事も考えてくれた事に。


息を切らした奈桜が梓の前にしゃがんだ。