パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「体、大丈夫?」


相変わらず、奈桜は優しい。
ただでさえ優しい目が、一層、優しく梓を映す。
梓の心に癒しが広がって行く。


「大丈夫。ありがとう」


微笑みながら答える。
もめていた事など今は関係ない。
今は、今。


「何で黙って行こうとするんだよ」


「ごめんね。勝手だよね。私……、勇気がなかったの」


「何の勇気だよ?」


奈桜の声は静かで落ち着いている。
場所が場所だという事もあるが、今からアメリカに行こうとしている梓とケンカなんかしたくない。
もめた状態で離れるには距離があり過ぎる。
絶対に、気持ちよく行かせてあげたい。
そしてもちろん、お腹の子を大事に思っているから。
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